えふえふ交通のブログ

京都のバスと、鉄道と。

洛バス専用車の変遷(2020/05/15 追記)

今回の記事のテーマは…
 
「洛バス専用車の変遷」
 
と致しました。「洛バス」とは、(京都)市バスの観光路線として多くの外国人観光客が利用される100号系統,101号系統,102号系統の3路線を「外国人向け観光推奨バス路線」と位置付け,愛称を「洛バス」とし,外国人観光客が一目で分かる車体デザインの導入等を行い,平成17(2005)年1月19日から運行を開始した路線です。(引用元

京都市交通局:洛バスで京都観光 )2020年で運行開始から15年目となる洛バスですが、そのルーツは1992年1月にチンチンバスを使用して運行を開始した臨100号系統にまで遡ることができます。今回の記事ではチンチンバス時代から洛バス、そして現在の観光系統としての、3路線の専用車両の変遷を追って見ていきたいと思います。

 
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なお今回の記事の執筆にあたり、「C61-200 車両図鑑」さんより許可を得て写真を掲載させて頂きました。また同氏のブログおよび「一都物語 京都市バスの館」、「系統ー市バスの系統を探る」を参照させて頂きました。この場をお借りして感謝申し上げます。

 
 

Period 1 臨100号系統&初代チンチンバスの運行開始

 

 前述の通り洛バスのルーツとなるのは、1992年1月に運行を開始した臨100号系統となります。運行経路は現在の100号系統とやや異なりますが、京都駅から岡崎エリアを結ぶ観光系統である点は共通しております(運行経路の変遷は

系統−市バスの系統を探る−をご参照下さい)。その臨100号系統の専用車両として導入されたのが、初代チンチンバスです。この車両は、馬匹輸送車と同じ日野フロアアンダーエンジンのシャーシに京都市電N電をイメージした東京特殊車体のボディが架装されたもので。1991年12月に5529号車の1台が、1992年3月に5541・5543号車の2台が五条営業所に導入されました。

 
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■5529号車は茶色塗装に白帯。(C61-200 車両図鑑さんのブログより)

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■5541号車は帯なしの緑色の塗装(C61-200 車両図鑑さんのブログより)

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■5543号車は帯なしの茶色塗装。(C61-200 車両図鑑さんのブログより)
 
★1992年3月以降の運用状況★
 臨100号系統 五条 5529・5541・5543(3台)


 

Period 2 2代目チンチンバス&101号系統の運行開始


 1997年に観光系統の運行が拡大されます。旧52号系統(現行系統と異なる)の経路を変更する形で、京都駅と金閣寺方面を結ぶ101号系統が誕生します。これと同時に、臨100号系統も100号系統に改められました。また、101号系統の新設と100号系統の増発に伴い、2代目チンチンバスが五条営業所に導入されました。導入された車両は、いすゞCNGキュービック3台で、車体はキュービックの原型を留めたものながら、市電車両をイメージした緑色のラッピングに、集電ポールを模した装飾が車両後部に取り付けられました(リンク先の写真参照)。車内は2+2列の座席配置となっています。導入された3台のうち6511・6512号車は101号系統に、6513号車は100号系統にそれぞれ充当されました。
 
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■2代目チンチンバスだった6513号車。2005年に洛バスラッピングとなったが、車両後部の屋根に集電ポールを模した装飾の名残が残っている。

※デビュー当初の姿は一都物語さんのページをご参照下さい。
 
★1997年10月以降の運用状況★
100号系統 五条 5529・5541・5543・6513(4台)
101号系統 五条 6511・6512(2台)

 

Period 3 102号系統&観光百景の運行開始

 

 続く3度目の節目となったのが2001年。この年に3つ目の観光系統となる102号系統が誕生しました。またこれと共に、100・101・102の3つの路線を「観光百景」と名付けられ、専用車両にはヘッドマークロゴマークがつけられるようになりました。
 車両面でも、102号系統の運行開始に伴い烏丸営業所から4台の車両が専用車両となりました。内訳は、三菱エアロスターKでMBECS(ディーゼル蓄圧式ハイブリッドバス)の5941号車、日産ディーゼルUAツーステで天然ガスバスの6125号車、同じく日産ディーゼルのJPノンステの218・219号車でした。また101号系統の専用車両も3台追加され、5台体制となりました。追加されたのは、2代目チンチンバスと同じいすゞCNGキュービックから6660・6661号車の2台と、いすゞキュービックノンステでKBS京都より贈呈された「かたつむり大作戦福祉バス」の94号車の3台です。
 さらに、101号系統の担当が五条営業所から梅津営業所に移管されました。

 

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■一般塗装からチンチンバスラッピングとなり、最後は洛バスラッピングとなった5941号車(上)と6125号車(下)。(C61-200 車両図鑑さんのブログより)

※デビュー当時およびチンチンバスラッピング時代は一都物語さんのページをご参照ください。(5941号車はこちら、6125号車はこちら
 
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■チンチンバスカラーでデビューした94号車。(C61-200 車両図鑑さんのブログより)


 ★2001年10月以降の運用状況★
100号系統 五条 5529・5541・5543・6513(4台)
101号系統 梅津 6511・6512・6660・6661※・94(5台)
102号系統 烏丸 5941・6125・218・219(4台)
※6661号車は一般塗装車のままで運用
 
 

Period 3.5 五条営業所の廃止

 

2003年に五条営業所が廃止されたことに伴い、100号系統が五条営業所から梅津営業所に移管されました。合わせて100号系統専用車両の4台もそのまま五条営業所から梅津営業所へ転属しました。ちなみに五条営業所の廃止のため梅津営業所の車庫拡張工事が行われていましたが、工事期間中梅津営業所の車両留置スペースが不足するため、101号系統専用車両を含む一部の梅津営業所の車両が五条営業所に留置される光景も見られました。
 
 

Period 4 観光百景から洛バスへ

 

これまで観光百景として運行されてきた観光路線の3系統でしたが、2005年1月より「洛バス」としてリニューアルを遂げました。初代チンチンバスの3台を除いた専用車両は、市電を模した緑色ベースのラッピングから、各系統のイメージカラーをベースにしたラッピングへと変わりました。
 また100・101号系統の増発が行われ、両系統の専用車両も増加しました。新たに専用車となったのは、いすゞキュービック+58MCボディの6222~6225号車の4台と、いすゞCNGキュービックの6509・6510・70・71号車の4台です。また2代目チンチンバスだった6511~6513号車の3台は、洛バスラッピング化にあたって集電ポールを模した装飾が撤去されました。


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■洛バスラッピングとなった6661・6225・218号車

 

★2005年1月以降の運用状況★

100号系統 梅津 5529・5541・5543・6222・6223・6509・6510・6513

          6660・6661・70・71(12台)
101号系統 梅津 6224・6225・6511・6512・94(5台)
102号系統 烏丸 5941・6125・218・219(4台)

 

 

Period 4.1 初代チンチンバスの引退

 

 洛バスが運行を開始した次の年である2006年、初代チンチンバスの3台が老朽化のため引退しました。5529・5541号車は同年3月21で運行を終了、5543号車も3月31日の特別運行をもって引退しました。これは洛バス専用車両としては初めての廃車となりました。この3台に代わって、いすゞエルガ+96MCボディの新車(1240・1241・1243号車)が専用車両として導入されました。


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■初代チンチンバスの代替車両として運用を開始した1240号車ほか3台。デビュー当初から洛バスラッピングとなっている。
 

Period 4.2 系統移管と専用車両の変更

 2007年3月のダイヤ改正で洛バスに大きな動きがありました。101号系統の担当が梅津営業所から烏丸営業所に、102号系統の担当が烏丸営業所から同営業所錦林出張所に移管されました。
 この動きに合わせる形で、両系統の専用車のほとんどが転属しましたが、1台例外となった車両がありました。それは101号系統専用車の94号車でした。94号車はダイヤ改正後に洛バスラッピングを解除され一般塗装車となり、九条営業所(京阪バス委託)に転属しています。94号車は洛バス専用車両の中で唯一の長尺車でしたが、長尺車の配置がない(車庫の構造上配置できない)烏丸営業所への転属ができなかったことから、洛バス専用車としての運用が解除されたと考えられます。この94号車の代替車両として、烏丸営業所生え抜きで日デUAツーステの6250号車が洛バス専用車両となりました。
 
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■94号車に代わって新たに洛バスラッピングとなった6250号車。
 
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■94号車は一般塗装車となったのち九条営業所(京阪バス委託)に転属した。
 
★2007年3月以降の運用状況★
 
100号系統 梅津 6222・6223・6509・6510・6513・6660・6661・
         70・71・1240・1241・1243(12台)
101号系統 烏丸 6224・6225・6250・6511・6512(5台)
102号系統 錦林 5941・6125・218・219(4台)
 
 

Period 4.4~4.9 本格的な世代交代へ

 初代チンチンバスの引退以降も、洛バス専用車両の大多数をツーステップ車両が占めていましたが。しかし、車両の老朽化が進み徐々にノンステップ車両への置き換えが進んでいきました。
 まず2009年の初頭に102号系統専用車両だった5941・6125号車が廃車となりました。代替車両として695・696号車がBRC(ブルーリボンシティ)としては初めてとなる洛バス専用車両となりました。
 2012年からはCNGキュービックの廃車が始まります。この時には既に、京都市交通局が市バス車両の使用年数を延長(15年⇒18年)してていましたが、CNG車両は燃料タンクの耐用年数の関係から、従来通り15年で車両を置き換えることとなっていました。特にCNGキュービックの大半は洛バス専用車だったため、洛バス専用車の置き換えが急速に進んでいきました。まず2012年初頭に6509~6513の5台が廃車となりました。これに代わって梅津の1559~1561号車が100号系統専用車に、烏丸の975・976号車が101号系統の専用車両となりました。なお5台とも専用車両に施される車体ラッピングは行われず、路線図・音声合成放送装置の取り換えやヘッドマークの掲出を行った上で、一般塗装のまま運用されました。続く2013年初頭には100号系統専用車両の6660・6661号車の2台が廃車となりました。こちらの代替車両も専用ラッピングを纏った代替車両は投入されず、当時梅津に配置されて間もない2530・2531号車が実質的な専用車両として運用されました。
 

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■2009年より洛バスラッピングとなった695号車。これにより102号系統の専用車両は全てノンステ車となった。

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■2012年より洛バス専用車両となった1561号車と975号車(下)だが、2014年までの2年間はラッピングがされないまま専用車両として運用された。
 
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■2530・2531号車は後述の洛バスラッピングリニューアルまでのつなぎ役として約1年間100号系統で運用されたが、その後梅津JRに転出した。
 
★廃車となった洛バス専用車両(2009~2014年)★

2009年 5941・6125(2台)
2010年
2011年
2012年 6509・6510・6511・6512・6513(5台)
2013年 6660・6661(2台)
2014年 6222・6223・6224・6225・6250・70・71(7台)
 
 

Period 5 洛バスラッピングリニューアル

 

 2014年3月22日に行われたダイヤ改正は洛バスにとって大きな節目となりました。ダイヤ改正が行われる直前の3月11日に、洛バスの新しい車体ラッピングがお披露目されました。
 ラッピングのリニューアルに合わせて、洛バス専用車両のラインナップも大きく変わりました。まず100・101号系統で運用されていたツーステ専用車は全て廃車となり、すべてノンステ専用車に統一されました。また100・101号系統の専用車は、100号系統が12⇒9台、101号系統が5⇒4台体制となり、一般塗装車と合わせて運用されるようになりました。なお102号系統は、錦林出張所が京都バス委託となりましたが、改正前と同じ4台が引き続き運用されています。
 
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■ラッピングがリニューアルされた洛バス3路線。
 
2014年3月以降の運用状況
 
100号系統 梅津 1240・1241・1243・1507・1508・1509
          1559・1560・1561(9台)
101号系統 烏丸 932・933・975・976(4台)
102号系統 錦林 218・219・695・696(4台)
 
 

Period 6~6.1 「観光系統」の運用開始

 2019年のダイヤ改正より、洛バス3路線を含めた主要駅と観光地を結ぶ急行系統を「観光系統」と定め、これらの系統では「観光系統」のヘッドマーク(マグネット式)を掲示して運行されています。

 さらに、100号系統では新たな試みが二つ始まりました。一つは、前乗り跡降り方式の採用です。これは、近年の観光客の大幅な増加に伴う慢性的な混雑対策として始まりました。2017年の10月・12月に100号系統で実証実験を行い、2019年ダイヤ改正より100号系統と東山シャトルで本採用されました。もう一つは、荷物スペースを拡大した車両の導入です。こちらも近年の慢性的な混雑対策として導入されたものです。2019年に導入された新型車両では、座席1区画分(車両中央右)をスーツケースなどが置ける荷物スペースが設置されましたが、同年の新車のうち2台(3682・3683号車)はこれに加えて車両後方左にも荷物スペースが設けられました。この2台は「観光系統」の全面ラッピングを施され、100号系統専用車として運用を開始しました。それに伴い、1508・1509号車が洛バスラッピングを解除され、一般塗装車に復帰しています。

 

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■観光系統ラッピングの3683号車。

 

 さらに、2020年のダイヤ改正では、102号系統でも前乗り後降り方式が採用されました。また、荷物スペースを拡大した「観光系統」ラッピングの新型車両が洛バス3路線に10台導入されました。これに置き換わる形で、洛バスラッピング車10台がラッピングを解除され、一般塗装車となりました。洛バスラッピング車は101・102号系統から消滅し、100号系統専用車の1559~1561号車の3台を残すのみとなりました。

 

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■観光系統ラッピングの3811号車。この年の大型車の新車はMP38となった。
 

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運用開始以来初めて洛バスラッピングを解除された1241号車。

★2020年3月以降の運用状況
100号系統 梅津 1559・1560・1561・3682・3683
          3811・3812・3818・3819(9台)
101号系統 烏丸 3820・3821・3822・3823(4台)
102号系統 錦林 3824・3825・3829・3830(4台)
 

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■洛バス専用車両の歴史年表
 
 

おわりに

 

 初めはチンチンバス3台で運行される細々とした100(臨100)号系統でしたが、今では日中7~8分ヘッドで運行される上に、多数の臨時便が運行される主力系統となりました。101号系統も2014年のダイヤ改正で30分ヘッドから15分ヘッドに増発、102号系統も30分ヘッドながら近年は営業係数が100を切る黒字路線になるなど、洛バスは京都の観光輸送の要といっても過言ではありません。
 しかし、2019年の「観光系統」が制定されると、洛バスは観光系統に取って代られることとなりました。2021年には残る3台の洛バスラッピング車が引退することも確実で、洛バスの今後の行く末が案じられます。
 
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最後までお付き合い頂き、どうもありがとうございました。